公園っていいな!民(たみ)営公園の思想を未来につなぐ

2019年10月31日

最近、都市部や交通等立地条件の比較的良い大きな都市公園(以下公園)において、公募型で民間企業の知恵と資金を活用し集客効果を高めるための施設整備や維持・運営管理が行われるPark-PFIの事例が急増してきました。

大阪府においては、府営公園の多くは本制度を活用し長期間の管理運営期間を担保したうえで、指定管理者を選定し、新たな投資も含めて施設整備や維持・運営管理等を委ねる方向が鮮明に打ち出されています。

これは、公園利用者数が公園の存在効果を証明する一つの評価である以上、また、人口減少による租税の収入源や超高齢化に伴う社会保障費等の増大で財政運営に苦しむ自治体にとって公園管理予算の縮減につながることもあり、こうした方向は必然な動きと言えるでしょう。

もちろん、この動きは、公園の立地条件等社会環境が、民間企業にとってのビジネス環境としても成立するという当たり前の論理が前提である認識を持つことが重要です。

今、東京一極集中の流れはますます加速し、地方都市の人口減少や高齢化による衰退は我が国最大の課題の一つです。現在、全国には、10万箇所、約12万haにも及ぶ公園の存在があり、その利活用は、こうした社会環境の変化が引き起こす諸問題の解決の一助になる可能性が大きく、様々な成果をもたらすものとして国民の期待も大きいと考えます。

筆者の職場は、兵庫県明石市にある兵庫県立明石公園です。我が国を代表する大きな公園で、築城400周年を迎えた明石城の城跡跡を公園化したものです。

JR明石駅(山陽電車明石駅)駅前の立地条件も最高で、面積も約55haと拡張を重ねて大きくなり、第二次世界大戦後、国民のスポーツヘの希求のために整備された野球場や陸上競技場なども具備した魅力あふれる公園です。

しかしこの公園には、後世に語り継いでいかなければならない歴史があります。

明石城は、1617年に、信州松本城から国替えした小笠原忠政(後に忠真)公が1619年に明石嬢を築城し、小倉城に国替え後、城主も次々と変わり、1871年の廃藩置県で廃城(1873年)になるまでの250年間続きました。

廃藩置県の後、城内の建物の取り壊し等の命令が来ましたが、失業した士族たちが、櫓の保存と城内の大きな敷地を公園化する運動を強力に勧め、1889年、「明石公園保存会」が設立され、会員から集めた出資金を公園の維持管理に充てる「民営公園」が誕生しました。

現在の官民連携で民間企業の資金力と集客ノウハウに頼るやり方とは異なり、先ず、公園を創り守り育てるという大義を建て、市民や企業に広く呼びかけ集めた資金を公園の維持管理に当てる住民参画型の民営公園というのが素晴らしいと思います。

明石公園には、城跡など見るべきところが沢山ありますが、最大の特徴は、廃藩置県後、士族が懸命に運動して残してくれた広大な芝生広場です。

この広い芝生広場を会場として用い、多彩なイベントが仮設的に複合的かつ重層的に行われ、まるでテーマパークのように多くの人々を楽しませています。

現在は、テントなど仮設工作物の構造や強度、さらに付帯設備が技術向上し使いやすくなっており、高度で柔軟なパークマネージメント力さえあれば、時代や地域住民のニーズに対応した高度な集客対策が可能となっており、むしろ、恒久的な建築物や工作物で建ぺいされていない、ただの大きな空間の存在の大きさが実感できます。

これは立地条件が大きな要素になっているものの、必ずしもPark-PFIによる新たな集客施設の建設というハード対応だけが集客の解決策ではなく、運営ノウハウのなどソフト対応の可能性を示す例でしょう。もちろん、外部資金導入等により公園の維持管理コストの削減という課題も併せて考える必要があることは言うまでもありませんが、かつての、明石公園保存会に習い、公園を専有的に使用する民間企業だけの資金力に頼る以外の方法も考えていかなければなりません。

ところで、公園には、暮らしの基本単位である住区に存在する広さ約4ヘクタールまでの住区基幹公園や都市スケールで存在する広さ10ヘクタールから50ヘクタールの都市基幹公園、さらに、前述した広さ50ヘクタール以上の大規模公園など多種多様です。

今、我々が考える必要があるのは、すべての公園において、その立地する地域が抱える諸問題に対して、いかに貢献できるかを考えていくことですが、特に、暮らしに直結する身近な住区基幹公園について、その対策と実行が急務であると思います。

その住区基幹公園等身近な公園の整備および維持・運営管理を担う明石市政の方向性によるところが大きいので、少し紹介します。

明石市は、1910年に県下4番目の市として誕生し、現在、面積49.42㎢、人口303660人の中堅都市です、周りを神戸市、加古川市、稲美町、播磨町に囲まれ、近年の「子育て支援」の充実もあり、全国的に人口流出の進む地方都市の中にあって、人口増加(特に20~30代も子育て世代が急増)が進む元気のある都市です。旧石器時代の人類「明石原人」や万葉集歌人柿本人麻呂の歌にも詠まれ風光明媚なところ、さらに統計135度の日本標準子午線上にあることでも有名です。

明石市では人口増加、特に子育て世帯の増加に比例して待機児童も増加している現状から、3公園に保育所を設置することを決めたようです。

明石市に設置されている公園(県立公園等除く)は、429か所151.95haで、そのうち住区基幹公園が380か所83.78ha全体の約55%(面積比。箇所比だと89%)の割合で市民生活に欠かせない存在です。

住区基幹公園の管理は市直営ですが、清掃、除草、潅水、安全点検等維持管理については、地域住民を中心に構成される市内283団体の公園愛護会に市から依頼しています。

公園愛護会の存在を抜きにしては公園管理が成り立たない現状です。

明石市の公園愛護会も、全国の事例と同様、地域住民の減少や高齢化等により、その活動の維持が厳しくなっている現状です。これは公園愛護会だけの問題ではなく、その母体とも言うべき自治会の機能低下が起こっており、地域コミュニティの維持にも赤信号が出ているということです。

今後、住区内の活力を維持発展するためには、公園という貴重な空間を舞台とし公園を活かし地域の魅力向上を目指していく方向転換が必要で、住区の小学校等教育機関や福祉施設など関係者さらに住区外の人々も巻き込んだ形で一体となり、維持管理中心から利活用を前面に出し運営していく視点での戦略と行動が重要です。

それには、公園を最大限使いこなして交流する機会をつくり、交流を通して地域と関係を持つ応援団(ファン)を作り出していくことが喫緊の取り組み課題です。

「公園ファン倶楽部」は、住区基幹公園にとどまらず、こうした思いを推進し実現するする場として設立されたもので、その役割と活動は重要であると思いますが、特に、地域の崩壊につながりかねない住区基幹公園の持続的な運営や維持管理にたいして、情報提供や新たな仕組みの提案さらに人材の確保に大きな役割を期待します。

先ずは「公園っていいな!」という共通の思いに立って、皆さんの身近な地域にある公園の価値を高め地域を元気にしていこうではありませんか!!

令和元年10月24日
石原憲一郎
公園管理運営士会西日本支部長
(兵庫県参与/(公財)兵庫県園芸・公園協会花と緑のまちづくりセンター技術顧問)

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