公園管理活動をすると健康寿命がのびる⁉

2020年2月12日

わが国では少子高齢社会が進行し、平均寿命は男性で81歳を超え、女性では87歳を超える世界トップクラスの長寿国となっています。しかし、皆さんは健康寿命という言葉を聞いたことがあるでしょうか。わが国の平均寿命と健康寿命のあいだには、男性で約8.8年、女性で約12.3年という日常生活に制限のある期間があるのです。つまり、寿命を迎えるまでに日常生活に制限のない期間が健康寿命ということになります。

日常生活を有意義に過ごすには健康であることが大切であり、WHOは「健康」を「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」としています。
健康を維持するには運動が効果的と言われていますが、精神的、社会的な健康を含めれば、緑のなかで過ごすことや園芸に代表される植物とのふれあいも様々な健康効果があることがわかっています。また、運動により得られる健康も、運動はスポーツをすることと理解される傾向から、生活スタイルのなかで体を動かすこと(これを身体活動と言います)にも健康効果があるという認識は薄いといえます。
そこで、公園からの健康づくりネットでは、公園管理活動と健康との関連を明らかにするために、松山市公園緑地課と松山市公園管理協力会の協力のもと、アンケート調査を行いました。

松山市は人口51万人の中核都市であり、300以上の公園を、一般的な公園愛護会ではなく地域の自治会が管理しているという特徴があります。こうしたコミュニティを有する地域性に着目し、松山市の都市公園で日頃から公園管理活動に参加している松山市公園管理協力会340団体から、会員2人と会員の同一居住地区の非会員2人ずつを対象に、2019年3月にアンケート票による調査を実施しました。アンケートの内容は会員としての活動形態や運動への意識、健康状態、地域の人とのつながりなどの設問としました。

回答は会員580人、非会員439人から寄せられました。性別は会員の7割以上が男性、非会員の6割が女性で、公園管理活動は70歳代以上の会員が中心であり、49歳以下の若い会員よりも長時間にわたり活動を行っています。

会員、非会員の運動と身体活動の状況を比較すると、運動習慣のある人は会員で約6割、非会員で4割強、身体活動の程度は会員で6割強、非会員で5割強と、どちらも会員のほうが体を動かす機会が多いことがわかりました。


左 運動習慣の有無   右 身体活動の有無

社会性の比較は、会員は地域とのつながりが「強い」「どちらかといえば強い」の回答が7割を超えているのに対し、非会員は5割に満たない結果でした。

回答者を7つの年齢層に分類し、年齢別の傾向をみてみると、運動の継続については会員・非会員ともに65歳以上から実施率が5割を超えます。健康状態については幅広い年代において多くの項目で会員が非会員よりも症状を感じる割合が少ないことがわかりました。特に「80歳以上」で、それまで会員と同程度推移してきた非会員の「日常生活での健康面の影響」がある人の割合が、会員の約2倍に増加するという顕著な差がみられたのです。社会的な関係では、65歳を境に、高齢になるほど会員の「地域とのつながり」「友人・仲間の存在」が増加していました。


日常生活での健康上の影響


日常生活のストレス


地域とのつながりに対する実感

会員・非会員の比較では、公園の利用頻度はほぼ毎日から週に1回程度までの高頻度の割合が会員で2割程度多く、公園管理作業等に参加することが公園を訪れるきっかけとなっています。
このことは身体、精神、社会的な健康にどのような影響を与えているのでしょうか。

日頃公園管理作業に参加する会員では、非会員よりも総じて身体を動かすことへの意識が高いといえます。会員の年齢層が非会員よりも高いことを考慮すると、身体活動の多さが健康状態の維持に寄与していることが推察されます。管理作業を含む身体活動を長年継続することにより、特に80歳以上という高齢(平均的に健康寿命が尽きる年齢)を超えて元気でいられる高齢者を増加させる(健康寿命の延伸)可能性が期待できるのです。


健康な人の割合

精神的な健康面では、日常的な役割と人との交流がストレス発散や生きがい、幸福度につながると考えられます。また、会員は65歳以上から地域とのつながりや仲間・友人の数が増加しているため、会員として社会活動に参加し、人と交流することにより社会的な健康がもたらされていると考えられます。

公園は、誰もが日常的に利用できる場所であり、市民それぞれの生活スタイルにあった時間の中で、身体を動かし、友人や社会と交流する機会をつくることができます。今回の調査では、こうした公園の特徴を活かし、地域の憩いの場であり財産として大切に管理する活動が、活動をするその人自身の健康にも大きく寄与していることが明らかになりました。会員として活動する市民は高齢者層が中心となっていますが、公園管理活動に参加することで多くの健康面へのメリットが得られることが周知・啓発されれば、若年層の参画や、将来的な生活習慣病の予防にもつながるでしょう。

男性の平均寿命が81歳、健康寿命が72歳、これから定年が70歳にということもささやかれています。70歳まで働いて、やっとのびのびと人生を楽しめるようになってすぐ健康寿命が尽きる…なんてことのないように、あなたが今いくつであろうと、すぐに健康への活動を始めたいものです。

浦﨑真一(一般社団法人公園からの健康づくりネット)

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