世界的建築家、槇文彦氏をお招きして ランドスケープシンポジウムの報告

2020年2月14日

~オーンスペースが主役で、建築は端役に過ぎない~

 令和2年2月8日、シンポジウム「槇文彦のランドスケープが招くアナザーユートピア」を開催しました。その経緯と開催報告をさせていただきます。

 昨年の夏、私は「アナザーユートピア」を読み、これは学生に聞かすべきと著者の槇文彦先生に手紙を書きました。面識はなかったもののお返事を頂き、飛ぶように上京し講演会の承諾を得ました。

 場所は関西の学生のアクセスを考え、中之島公園の中央公会堂に決定。舞台が整い、槇先生は来阪されました。会場は定員を超え、立ち見が出るほどで、建築・ランドスケープ・造園・緑化関係の実務家や近大・関大・阪工大・神大・阪大などの学生が集りました。

 講演はニューヨークの「4ワールドトレードセンタービル」から「幼少期より過ごされている別荘地の小さな公園が、世代を超えるコミュニティの形成につながる」などに及び、実に幅広いものでした。驚くべきは建築家の槇先生が「オープンスペースが主役で建築は端役に過ぎない」と語られたことです。

 先生は、タイムリーなことに倉吉市に建設する鳥取県立美術館コンペの採択者に選ばれました。計画地に眠る国指定史跡の大御堂廃寺を美術館のデザインに求め、吹き抜けに「ひろま」を配されました。それは空間の内外を繋ぎ、1000の運営プログラムを用意し、鳥取県民の美術愛好者が一堂に会するまちづくりの拠点を担うものでした。槇先生の鳥取への心遣いに感謝です。

 次に中之島公園を良くする会の吉村元男会長が「万博公園の自然再生と大阪市内の緑の景観、

 そして中之島公園の劣化の現状と、安藤忠雄氏の「本の森」について問題提起をされました。」
これを受けてシンポジウムに進み、国際造園研究センターの繁村誠人理事長が大阪府の緑化行政の礎を成した大屋霊場の業績を語られ、また関西学院大学の佐山浩教授からは、都市の自然観について、大局的視点から示唆を頂きました。

 最後に槇先生から締めの言葉の中で、「建築のコンペは山ほどあるが、ユニバーサルデザインのオープンスペースの国際コンペをしたらどうか」と提案されました。これこそ「命輝く、未来社会のデザイン」ではないでしょうか。実現の場所は、関西・大阪万博会場の跡地です。

 偶然にもパネリストに、かつての大阪オリンピック応援団長で、元大阪弁護士会副会長の辻口信良氏が出席されており、1998年、会場の舞洲に「オリンピックの森」を提案されました。私もプラン策定に携わりましたが、誘致合戦で北京に負けた経緯があります。あれから22年経ちましたが、ミッションの「緑が人間と平和をつくる」は未だ生きているのです。関西万博は「健康と医療」をテーマにすることからピッタリではないでしょうか。

 こうしてシンポジウムを終えましたが、吉村元男会長の問題提起について、シンポジウム散会後「十分なる議論がなされていない」と出席者から指摘を頂き、これは今後の課題で、次回のフォーラムで取り組む所存です。

 最後に、鳥取環境大学の学生が受付、司会、パソコン操作、槇先生のサポートを行い、普段会えない人とふれあい、貴重な経験をさせて頂きました。鳥取では学べない知見を得たに違いなく、お越しになりました皆様方に感謝申し上げます。 

槇先生、建築・環境を学ぶ学生、パネリストの皆さんと

NPO国際造園研究センター    中橋 文夫

TOPに戻る