1.公園を作る、から使うへ
1970年から50年間にわたり建設コンサルタントの仕事をしてきました。当初は公園計画設計の業務も多く、数多くの公園の誕生に関わりました。1970年当時の公園ストックの量は、全国で1.5万箇所、2万ヘクタール強、整備水準は2.7㎡/人程度でしたが、2018年度末では、全国に11万箇所、13万haの公園があり、1人当たり10㎡をこえる整備水準となっています。この間、公園個所数と公園面積は約7倍に増えたことになります。
しかし、1990年代になると、量を増やすよりも、質の向上、が問題になります。つまりあまり利用されない公園や、3K(くらい、こわい、きたない)の公園も見られるようになったからです。そこで、公園は作るだけでなく、あとあと使われる公園が重視されることになり、利用者である地元の人たちと一緒に公園づくりを考えるワークショップなど市民参加型の公園が増えてきます。1990年代以降は、公園は作るから使うへと、整備目標が変わってきたと思います。
2.コロナ禍の中で公園を使う
近年日本では少子高齢化が進み、町の空洞化、社会の活力低下などがいたるところで見られるようになってきました。公園に関しては、整備・修繕費はもとより管理運営費も少なくなったため、公園のストック(蓄積された資産)を活用した様々な工夫が行われています。公園内に、町に活性化をもたらす商業施設を導入したり、地域に不足している保育所を建てるなど、まちづくりに役立つ公園再整備や、管理運営に民間のノウハウや競争原理を持ち込む指定管理者制度の導入などの取り組みです。
今全国の公園面積の約半分は指定管理者制度を使った管理運営が行われています(平成27年度国土交通省調査)。公園の管理運営の専門家の資格として作られたのが「公園管理運営士」で、全国に有資格者は2300人ほどいます。
私は、公園管理運営士が情報ネットワークを築くために設置された、公園管理運営士に登録された方による会「公園管理運営士会」の会長となって4年目になります。この間、会員の皆様にいろいろなメッセージを発信していますが、今一番注目しているのは、コロナ禍の中での公園利用です。新型コロナ感染症が拡大している時でも多くの方が公園を利用され、公園は、運動不足を解消して健康を維持する、またステイホームで溜まったストレスを解消するなど、みんなを元気にする場所として活用されました。国土交通省や全国都市公園整備促進協議会でも、公園を活用して新型コロナに負けない健康的なライフスタイルをつくろう、というメッセージを発信し、ポスターを作成して、公園の有用性をアピールしています。
公園は、みんなを元気にする重要な場所だ、という意識は確実に日本社会に広がりつつあります。公園管理運営士が、率先して公園の利活用を図る役割が重要になってきました。
20200323(月) 大阪市中央区中大江公園では多くの子供が遊んでいた 15時半筆者撮
3.公園を育てる、ということ
もともと公園は、その出自からして開発で提供されたものが多く、樹木も小さく、遊具や広場が少しあるだけ、という形状だったのですが、周りの町が発展・成熟してくると、お祭りや健康運動の場、また震災などいざという時の避難場所になるなど、時代や周辺状況の変化とともに変わってきます。樹木も大きくなり、花壇が整備され、虫や鳥が飛び交い、遊具も順次新しく設置されて、地域の大切な宝物に成長していきます。
地域のみんなで育てる公園、これが公園の本来の姿です。
公園愛護会などの地域ボランティアの方々や、自治会、子供会、老人会、商店会などのコミュニティ組織の関係者の創意工夫によって、楽しく美しい公園、利用者に愛される豊かな空間に育っていきます。
公園管理運営士という公園のプロが、専門家の立場から、地域で公園を育てる際の支援やアドバイスを行う公園も見られるようになりました。また指定管理者になっている公園では、いろいろなプログラムを提供し、当事者として地域の方々と共に公園を育てていく役割を担っていくことも増えてきました。
公園を育てる専門家になる、これが公園管理運営士に与えられた仕事だと思います。
4.公園を育てる地域の事例
それでは実際にどんな公園で、どのように公園が成長していくのか、2~3の事例をあげます。
東京都豊島区役所では、地域で公園を育てる「小さな公園活動プロジェクト」に取り組んでいます。「上がり屋敷公園をみんなで育てよう」の井戸端会議のFB案内が区の広報「としまSCOPE」に載っています。
また練馬区では、石神井町八丁目の「みんなの広場公園」を「公園育て計画」で育てていく取り組みが進行中です。
そのほか、千葉県立幕張海浜公園を育てる会、千葉市の園生の森公園を育てる会、新潟県上越市の五智公園を育てる会、西東京市のいこいの森公園を育てる会など、多くの公園を育てるボランティア団体が活動しています。
公園管理運営士が関わって公園が育っている例としては、ブーゲンビリアによる地域活性化の取組(宮崎県立青島亜熱帯植物園)、子供生物調査隊の活動運営による環境学習の拠点化の取組(札幌市西岡公園)などが雑誌「公園緑地」に掲載されています。
これからの公園は、地域の宝物、またコロナ禍にも負けない健康拠点として、しっかりと育てていくことが求められていると思います。
(一社)公園管理運営士会会長
(一社)公園からの健康づくりネット理事長
糸谷正俊